<発足>
静岡数学研究会は1981年、もっと数学を勉強したいと考えて静岡市内の定時制高校に転勤してきた二人の高校教師のゼミとして出発した。この数学ゼミは、週2回、静岡高校近くの喫茶「ラフォーリア」で行われた。それから徐々に会員が増え、ゼミ会場も静岡農高、静岡工高、サンライフ藤枝、藤枝市文化センターと移り、現在2021年に至るまで活動が継続されている。
<活動>
ほぼ月1回開かれてきた数学ゼミのテーマは、複素関数論、微分方程式、宇宙論、解析力学、量子力学、相対論、ガロア理論、グラフ理論、生物物理学、電磁気学、リー群・リー環、一般相対性理論、量子力学と移り、多くの分野を歩んできた。会員は数学教師が多いが、物理の教師もおり、企業の研究者の方が参加していたこともあって、多様な方々から構成されている。研究会は長く継続してきたので、現在は教員を退職した会員が多い。その中の一人は高校教員を退職後、60才を越えて静岡大学理学部物理学科の大学院に正式に合格し、修士課程を修了し、この3月に博士号が認められる。(下の関連新聞記事を参照)
<相対論の学習>
上に述べたように、研究会は今まで多くのテーマに取り組んできた。現在の量子力学の前は、一般相対性理論であった。相対論では、テキストに『趣味で相対論』(広江克彦著、理工図書)、『あきらめない一般相対論』(富岡竜太著、プレアデス出版)を使って学習した。
この他多くの本も参考図書としてきたが、一般に、物理と数学にまたがるテーマについて学習する場合、物理学者の書いた本は、論理的数学的展開より物理的要請を重く見て書くためか、私たちには厳密性に欠けるように感じられることが多々あった。
逆に、数学者の書いた本を読むと、一般的に理論が展開されるため、直観的にとらえにくく、物理的現象との関連を理解するのが難しく感じてしまう。
相対論を学んでいる際、会員の一人は、「『理論物理のための微分幾何学』(杉田勝美、岡本良夫、関根松夫著、森北出版)は素晴らしい。この本を読んで初めて、共変微分、微分形式などが実感を伴って、論理的にもしっかり理解できた。」と感激して述べている。
このように、物理的事象の直観的理解と数学的理解がともにできるような本に出会うことの方がはるかに少ない、と思われる。また、途中の経過が省かれて、結果のみ記述されることも多いので、書かれている内容が結局はブラックボックス化してしまう場合もあるように感じている。
<量子力学の学習>
その意味で、私たちが『趣味で量子力学』『趣味で量子力学②』(広江克彦著)を学んできた際には、私たちなりに理解していった内容は拙いものであるにしても、途中の経過を省略しない形で展開しているため、多少なりとも参考にしていただける方がいるのではないか、と考えた。そのため、次の3つのテーマでの学びをブログに載せることにしました。
(A)電子の波動関数を省略なく導く(1)球面調和関数Y(θ,Φ)とルジャンドル多項式
(B)電子の波動関数を省略なく導く(2)動径方向の関数R(r)とラゲールの多項式
(C) 調和振動子の波動関数を省略なく導く調和振動子とエルミート多項式
(A)、(B)、(C)については、それぞれのリンクをクリックしてください。このような内容を少しでも参考にしていただける方がいるなら、同じ勉強仲間として、研究会として大変幸甚に存じます。
(月例数学ゼミの案内)↓
メンバーのHojyo氏が作られた「名著と呼ばれる数学書を読もう!」HP
<40周年研究会での新聞記事>
<研究会メンバーMさんについての新聞記事>
静岡新聞記事2021.03.24
67歳高校講師に博士号 定年退職後に学び直し 静大学位授与式
藤枝市の松本雅巳さん(67)が23日、静岡市駿河区のグランシップで開かれた静岡大の学位記授与式で、定年退職後に入学した同大学院自然科学系教育部から博士(理学)の学位を授与された。「定年退職後の生き方の一つとして参考になれば」と話す。
博士号の学位記を手にする松本さん=静岡市駿河区のグランシップ
36年間勤めた高校教員を定年退職した後、2016年から同大学院に通い、物理学の修士課程と博士課程を修了した。「定年後に勉強し直したいという思いで入学を決めた。非常に充実した5年間だった」と大学院生活を振り返った。
現在は藤枝明誠高で非常勤講師を務め、数学と物理学を教えている。大学院での学びを生かしつつこれからも講師を続けるという。「年齢を理由に選択肢を制限せず、いろんなことに挑戦してほしい」と同世代に向けメッセージを送った。
<30周年研究会での新聞記事>
<20周年研究会での新聞記事>